第9回「野菜価格とにらめっこ~工夫を凝らした育苗で効率的にキャベツを栽培~」

神奈川県三浦市のキャベツ生産者である小川吉守さんは、160aの畑で毎年8月から5月まで、季節に応じて、冬キャベツ、春キャベツ、中早生キャベツの三種類のキャベツを栽培しています。お話を伺った3月22日は、ちょうど冬キャベツの出荷が終わり春キャベツの出荷が始まろうとしている時期でした。
お話をされる小川さん
小川さんがキャベツ栽培において特に工夫されているのは、「セル苗」です。セル苗とは、小さなポット(セル)が複数連なった一枚のプラスチックトレイで育てる苗のことです。セル苗のメリットとしては、天候を選ばず計画的に種播きできること、そしてビニールハウスの中の狭い面積でこまめに水やりや病害虫防除ができることなどがあります。三浦市では畑に直接種を播く生産者が多く、小川さんのようにセル苗を導入してキャベツを栽培しているのは、数軒程度だそうです。小川さんも元々は直播栽培をしていましたが、17~18年前、何気なく見ていた農業資材のパンフレットから情報を得て、セル苗を導入するに至りました。

小川さんは、品質の高いキャベツを出荷するため、地元の仲間と7人で厳密に協同販売を行い、決まった市場に出荷しています。この7人の仲間は、収穫したキャベツの品質が良くない場合にはごまかさずに品物のランクを落として出荷する判断ができる、選び抜かれたメンバーです。
キャベツ畑と小川さん
このように、丹精込めて品質の高いキャベツを作る小川さんですが、農業はおもしろいことより、むしろ大変なことが多いと正直に話してくださいました。野菜の相場は天候に大きく左右され、豊作の時は価格が下がり、不作になると価格が上がります。そのため、全体として豊作の時には生産者の手取りが少なくなり収入減となるため、豊作だと言っても生産者は必ずしも喜べないのです。キャベツの価格が安く、ダンボール代の方が高くつく場合にはせっかく育てたキャベツを出荷せずにトラクターで潰してしまうこともあります。小川さん曰く、農業は「毎年命がけの博打のようなもの」だそうです。

小川さんは現在73歳で、奥さんや娘さんと一緒にキャベツ栽培をしていますが、年齢を考えると今後何年も農業を続けていくのは難しいと感じています。娘さんのご主人が定年後に後を継ぐことになれば続けていけますが、「野菜価格の不安定さを見ると、とても継いでくれとは言えない」そうです。
キャベツ畑
今回の取材を通し、小川さんのように工夫を凝らして品質の高い作物を栽培・出荷する生産者さんであっても、相場に左右され後継者育成が難しいという日本農業の現状が伝わってきました。
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