第10回「明日の農業を支える若き力(有限会社ぶどうばたけ 三森基史さん)」【後編】

有限会社ぶどうばたけ(以下、ぶどうばたけ)は、山梨県甲州市で48種類もの生食用のぶどうの栽培を行い、市場への出荷のほか、観光ぶどう園の経営やぶどうの加工品の製造・販売も手がける農業法人です。また、敷地内にある別会社、菱山中央醸造有限会社では手絞りでワインの醸造も行っています(いずれの会社も代表取締役は三森斉(みつもり ひとし)さん)。今回は、期待の後継者である三森基史(もとふみ)さんにお話を伺いました。お話の内容を前編・後編の2回に分けてご紹介します。
 

【後編】世の中の農業者への見方を変えたい~ゼロから物を生み出す仕事だから~

タグのついた木
農業を「思っていたよりおもしろい」と話す基史さん。「世の中における農業者の地位を向上させたい」という大きな目標があります。基史さんが農業研修でアメリカに滞在した際、農業者の見られ方が日本と大きく異なることに驚いたそうです。アメリカでは農場を経営すること、農場で働くことは尊敬を持って見られます。しかし、現在の日本では決してそうとは言えません。農業はゼロから物を生み出す仕事なのだからもっと評価されてもいいのでは、というのが基史さんの想いです。また、自社のぶどう園だけでなく地域全体として農業を盛り上げて活性化させていきたいと考えています。
また、基史さんは将来会社を大きくしていくにあたり、作業を「見える化」することの大切さも感じています。「『農業は長年の勘』とか言っている場合ではなく、誰にでもわかるように、まずは昨年から48種類あるぶどうの木に品種の名前を書いたタグをつけた」そうです。GAP*にも取り組み、従業員全員で知識と情報を共有することによって会社の発展を図ろうと考えているとのことです。
 
将来の目標を語ってくださる基史さんですが、ぶどうばたけは既に地域をリードする存在として「農福連携」にも積極的に取り組んでいます。地元の福祉施設と連携し、障がい者の方々にぶどうの袋かけ、収穫、草取りや枝拾いなどの仕事をお願いしています。そのおかげで忙しい時期に人手を確保することができ、作業効率が上がっています。もちろん障がい者の方々それぞれに向き不向きがあるため、福祉施設の職員さんと相談して見極めながら、少しずつ作業に慣れていただくようにしています。この農福連携は本格的に始めてからまだ1年ですが、来年以降も続けていきたいと考えているそうです。
 
菱山中央醸造
ぶどうばたけでのぶどう栽培や観光ぶどう園の仕事に加え、基史さんは敷地内にある別会社の菱山中央醸造でワインづくりにも携わっています。手絞りでラベルがない(酒販法の関係で蓋に最低限の情報を記載)という特徴を持つそのワインは、実は豪華列車「四季島」で提供されています。ラベルがない理由は、もともと販売目的というより自家消費目的でつくり始めたためです。田んぼがなく日本酒をつくることができない土地柄、菱山地区では古くからワインがつくられてきました。ワインというよりむしろ、ぶどうからつくるお酒「ぶどう酒」の文化です。たくさんつくるのではなく自家消費用としておいしくつくるため、ワインは生食用のぶどうを使った手絞りにこだわっています。
 
 
店頭
ぶどうばたけと菱山中央醸造の会社としてのますますの発展、そして基史さんのこれからのご活躍がとても楽しみです。
*GAPとは、Good Agricultural Practice(農業生産工程管理)の略で、農業において食品安全、環境保全、労働安全などの持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みのことです。これを日本の多くの農業者や産地が取り入れることにより、結果として持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化につながるとともに、消費者や実需者の信頼の確保が期待されています。
 
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