日本農薬株式会社 「農業 × 人材 × 未来」 RECRUITING

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留学経験者座談会Vol. 2 Roundtable on Experience Studying Abroad

留学者本人が留学先を選ぶ

まず、海外留学までの経緯を教えてください。

総合研究所の各部署から毎年1名ずつ海外へ留学できる制度があり(当時)、上司から打診されたときに、「ぜひ」と即答しました。話をいただいた2007年頃は、入社して9年目にあたり、研究者としてもうひと回り成長したいと考えていた時期で、そのきっかけになるかもしれないと思えたからです。

私も同じような経緯です。当社では、留学者本人が研究テーマを設定して留学先も探します。そのため、科学雑誌『Nature(ネイチャー)』に、合成技術に関する興味深い論文を発表していた教授の研究室で学ぼうと、シカゴ大へ行きました。

私は、当社が開発したチアジニル(商品名『ブイゲット』)の作用機序(※1)について研究したいと考え、農学系で有名なカリフォルニア大学デービス校を選びました。

留学先は、大学に限定されているわけではありません。私の場合は、環境動態のシミュレーション解析を依頼していたイギリスの会社の研究室へシミュレーション解析の基礎技術を学ぶというのが、大きなテーマでした。

私が選んだのは、『米国国立環境健康科学研究所(NIEHS)』です。ここは、アメリカにおける国立衛生研究所の一つで、環境中の化学物質が人体へどのような影響を及ぼすのかといったことを研究しています。ここで、顕微鏡による動物組織の観察技術を磨いたり、ガン発生のメカニズムの一つである遺伝子の変異を検出する研究に参加したりしました。

※1 作用機序…薬理学用語。薬物が生体に何らかの作用を及ぼす仕組みや、メカニズムを意味する表現。

海外へ出たことで新たな気付きを得た

留学先で戸惑うことはありましたか?

研究については、日本で行っていたことの延長だったため、それほど戸惑うこともなく、充実した時間を過ごすことができました。ただ、海外へ行くのがプライベートを含めても初めてのことだったので、日常会話には苦労しましたね。

研究室では、専門用語などの共通言語があるので、英語でもなんとなく意味は理解できるのですが、街中へ出ると、そうはいきません。買い物一つするのも大変でした。しかし、言葉というものは、そのうち慣れるもので、積極的に話しかける姿勢さえあれば、それほど大きな問題ではないと思います。

欧米人の公私のメリハリには、戸惑いよりも感心させられました。プライベートを大切にしていて、家族との時間をしっかり確保する分、仕事となると、ものすごく集中する。ただ、仕事が途中であっても、時間がくると帰ってしまうのには、困りましたが。

本当に。研究室に遅くまで残っているのは、アジア人ばかりでしたね(笑)。

私は、語学や慣習だけでなく、研究においても、かなり戸惑いました。NIEHS では、20名くらいの研究員が、同じ動物の組織標本を顕微鏡で観察して、それがどのような症状なのかについて徹底的に意見を戦わせます。彼らは皆、組織の異常や過去の症例など、自らの主張を裏付ける専門的な根拠を示しながら、極めて論理的に論旨を構築していました。その専門性の高さに、正直なところ、ついていくことができませんでした。「君はどう考える?」と聞かれて、答えに詰まることがしばしばありました。でも、それが刺激にもなったように感じています。

刺激?

はい。顕微鏡を見て自分で評価をくだすということは、とても主観的な行為であって、その判断の信ぴょう性は、判断をくだす人の能力に依るところが大きいものです。能力の足りない人物に「この体組織の状態は、ガンだ」と言われても説得力はありませんから。彼らは、そのことを理解していて、自らの能力を高めることにとても貪欲でした。留学したことで、そのことを再認識できたし、励みになりました。

私も同じ様な経験をしましたね。入社してから留学するまでの15年間で、良い意味でも悪い意味でも、仕事に慣れてきていたのだと思います。いつの間にか、目を通す文献やアンテナにひっかかる情報が限られていました。それが、大学の研究室へ席を置き、アカデミックな研究を再び経験したことで、化学という広い視点から化学合成という分野をとらえなおす契機になったと感じています。ある程度キャリアを重ねて、専門性の〝深さ〟にばかり目が向いていた時点で、“幅”を意識する機会をもてたことは、貴重な体験でした。

グローバル化は、道半ば

それでは最後に、海外留学経験者として、現在日本農薬が進めているグローバルという方向性について、思うところを聞かせてください。

新規化合物を発見するという点では、すでに世界基準で戦えている自信はあります。しかし、グローバルという意味では十分だとはいえません。開発の初期段階から海外の病害虫をターゲットにした剤の開発に取り組むなど、今以上に世界市場を意識した取り組みを増やす必要があると思います。そうでなければ、開発スピードやコストという面で、世界の巨大企業と渡り合うのは難しいのではないでしょうか。

私が留学した頃と比べれば、意識の面でも、実際の業務の面でも、だいぶ進んでいると思います。しかし、海外における農薬の登録は、現地法人や現地事務所に任せている部分が多く、何か問題が発生してから事後対応するという状況が多々あります。そのロスを防ぐため、もっと早い段階から本社がイニシアチブを発揮して関与する必要があると考えます。

それと、海外で事業を行うからには、もっと交渉力を鍛える必要があります。留学中にも感じたのですが、外国、特に欧米では小さい頃からディスカッションの訓練を受けていて、自分の意見を主張することに長けています。そのため、海外での交渉事をこちらのコントロール下に置くためにも、交渉力は欠かせない要素だと思います。

世界というフィールドをもっと有効に活用する視点も必要なのではないでしょうか。例えば、日本が農閉期で試験ができないときに東南アジアで行えば、時間を有効に使えます。「日本と海外」と別々に考えるのではなく、世界中を一つのフィールドととらえて有効活用していく発想が大切なのかもしれません。

いずれにしても、日本農薬のグローバル化は、いまだ発展途上にあります。この状況を楽しみ、真のグローバル化へ向けて共に汗を流せる学生さんと一緒に、一歩ずつ前進していけたらいいですね。