第5回「次世代へつながる栽培・防除体系の確立を目指して」

第5回「次世代へつながる栽培・防除体系の確立を目指して」1

手柴真弓さん(福岡県農林業総合試験場 病害虫部 病害虫チーム 研究員)らは、柿の難防除害虫であるフジコナカイガラムシのIPM(Integrated Pest Management=総合的病害虫・雑草管理)の研究に取り組んでいます。福岡県では、柿などの栽培において、長年に亘りフジコナカイガラムシが大きな問題になっています。フジコナカイガラムシは樹皮の裂け目や果実とへたの間など、隙間や溝が大好きな虫です。そのため、どうしても散布の際に薬液がかかりにくくなり、農薬だけでは思ったように防除できず、農業現場では新たな技術開発を求める声が日に日に高まっていきました。この現場からのニーズを受け、2001年からフジコナカイガラムシのIPMの研究に着手されたのが手柴さんです。

柿の難防除害虫「フジコナカイガラムシ」

農業現場や試験場の圃場などを調査した結果、それまで現場で使用されていた農薬が、害虫だけでなく、土着天敵にも影響を与え、天敵の本来の活動を妨げていることがわかりました。そこで、手柴さんらは、選択性が高く(目的とする害虫にだけ効果を示す)、天敵に影響の少ない農薬を使う防除体系をつくることにしました。

フジコナカイガラムシの天敵「フジコナカイガラクロバチ」

手柴さんらの提案する、土着天敵を活用した柿のフジコナカイガラムシの防除体系では、前半(6月頃まで)は天敵に影響の少ない農薬(選択性の高い殺虫剤など)を使用し、フジコナカイガラムシの密度を低下させます。この時期には、柿の果実にフジコナカイガラムシが隠れる場所がなく、フジコナカイガラムシも齢期が揃うので、農薬の効果が現れやすいためです。果実の肥大によりへたの下に薬液がかかりにくくなったり、フジコナカイガラムシの齢期が不揃いになる後半は、天敵を活用します。「農薬と天敵の両方をバランスよく活用すれば、農家はコストを抑えて防除することができる」と手柴さんはおっしゃいます。

収穫期の柿

福岡県は、甘柿の生産量で全国トップを誇ります。県として、新品種の育成や輸出向けの生産にも積極的に取り組んでいます。しかしながら、輸出だけでなく「国内でも、県内でも、年間を通じて旬の果物をたくさん食べてほしい」というのが手柴さんの願いです。
「とにかく農家が収益を上げられるようにしたい。子供が『ぜひ継ぎたい』と思う農業になって欲しい。そのために自分のできること、つまり、農家が栽培しやすく、コストがかからない防除技術を考えることに取り組んでいる」と話してくださいました。「農家と消費者の両方がメリットを享受できるように」という手柴さんの想いが伝わってきました。

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