農薬にできること、私にできること

07毒性を予測して
安全な製品につなげる

生物資源科学研究科応用生命科学専攻 研究本部/安全性研究

H.MH.M

H.M
研究本部 総合研究所 安全性・薬理グループ 2018年入社

大学院ではマウスや培養細胞を用いて、乳汁中に含まれる生理活性物質の生理機能について研究。研究の面白さを実感し、大学院での経験を活かせる研究職を志望。就活サイトで知った日本農薬では、生物や細胞を使った研究分野に自分のバックグラウンドが活かせると感じ、面接官のこれから一緒に頑張ろうというメッセージに表される温かい社風に惹かれ入社を決意。

私のミッション 研究開発を
加速させる技術に挑戦

農薬の候補化合物のヒトに対する安全性を評価するグループに所属し、主に遺伝毒性に関する業務を担当しています。遺伝毒性とは、化学物質等が細胞のDNAや染色体の構造や量を変化させる現象のことで、その結果、細胞に異常が起こり、発がん性や生殖発生毒性などのリスクを生じさせるものです。遺伝毒性が判明した化合物を農薬として開発するのは非常に難しく、遺伝毒性の有無はその化合物の運命を左右しかねないと言っても過言ではありません。これまでは細菌、細胞や実験動物に化合物を曝露し、遺伝子の突然変異や染色体異常などが認められるかを実験で調べてきましたが、近年ではコンピュータで遺伝毒性の有無を予測する「in silico(インシリコ)毒性予測」という新しい手法にも取り組んでいます。これは計算科学という技術領域で、実験でデータを得るのではなく、過去の知見や化学構造との関係性に基づきコンピュータでシミュレーションする手法です。新しい農薬の創出においては、探索や開発研究のスピードに大きく影響するため、いかに早期に遺伝毒性の有無を判断するかが大きな課題である中、in silico毒性予測は大きな武器となっています。

研究開発を加速させる技術に挑戦研究開発を加速させる技術に挑戦

携わっている仕事 チームで議論して
評価体系を検討する

in silico解析では化学構造と毒性の相関を調べ、毒性ありと予測された化合物については、特徴的な構造の有無などを検証しています。中でも生物の遺伝情報に異常を引き起こす、変異原性の予測に注力しています。初めての経験ではありましたが、化合物そのものを合成しなくても、化学構造をデザインした時点で評価できるメリットに強く魅力を感じ、試行錯誤しながら取り組んでいます。予測結果は、他部署の研究員にフィードバックし、どの構造に毒性の懸念があるのか、今後どのように進めるかを議論し、より良い化合物の創出を目指しています。このin silico解析をはじめとし、安全性・薬理グループでは、探索研究の早い時期から様々な安全性評価を実施しており、その結果をもとに他部署の研究員と探索の進め方を議論する等、新しい農薬の早期創出に貢献できるよう努めています。
in silico毒性予測とは別に力を入れて取り組んでいるのが、遺伝毒性の新しい評価系構築です。一つの評価系にも解決すべき課題はいくつもあり、様々な観点からの解決が必要とされるため、チームメンバー間での議論が不可欠です。初めての挑戦ではありましたが、思い通りの評価方法をつくり上げることができました。入社以来取り組み続け、一つやりきったので嬉しさがありました。

チームで議論して評価体系を検討するチームで議論して評価体系を検討する

面白みとやりがい 未知の分野にチャレンジする
面白さ

新しい遺伝毒性試験やin silico毒性予測の導入では、主体的に取り組んできました。試行錯誤の末に導入した評価系が、開発のスピードアップに貢献していると思うと、やりがいを感じています。若手がこうした新しい分野や重要な業務を任せてもらえるのが、この研究所の良いところだと思います。新しいことを習得する難しさはあるものの、未知の分野へチャレンジすることにとても面白さを感じています。
安全性・薬理グループでは化合物のさまざまな毒性を限られた人数で調べています。化学物質の安全性評価には生理学、解剖学、生化学、薬理学、病理学、分子生物学など幅広い分野からなる毒性学の知識が求められ、個々に毒性学全般の知識を蓄積していかなければなりません。また、各実験の責任者として最終的な評価や判断を行うには、その分野に関わる深い知識と経験も求められます。少しでも早く知識・経験を身に付け、安全性・薬理グループに貢献したいと思っています。そして企業研究員として、自分の専門分野だけではなく、会社、組織から必要とされる場面で最大限に力を発揮できるような人財になることが目標です。

未知の分野にチャレンジする面白さ未知の分野にチャレンジする面白さ

農薬にできること、私にできること

安全性研究を通じて安全な農薬をつくり、
持続可能な社会づくりに貢献していきたい

これからの農薬はより環境やヒトの安全への配慮が必要で、環境負荷低減といった観点からもSDGsやみどりの食料システム戦略などが掲げている持続可能な社会づくりに貢献しなければなりません。私ができることは、安全性試験を通じて安全性の高い候補化合物を見出し、農薬の安全性を科学的に保証することです。そのような研究活動を通じ、「良く効く」という観点だけでなく、環境やヒトに安全な農薬の創出に携わっていきたいです。

ある日のスケジュール
8:15 出社
8:30 毒性試験を開始(化合物を細胞等に処理しその影響を調べる)
11:00 デスクワーク、メールチェック
12:00 ランチは自分のデスクでお弁当
13:00 引き続き毒性試験
15:30 データのまとめ、解析
16:30 翌日の試験準備
17:30 退社
私の仕事道具
蛍光顕微鏡が手放せない
蛍光顕微鏡が手放せない
遺伝毒性に関する試験をはじめ、様々な場面で活躍する蛍光顕微鏡。細胞や染色体の異常を調べるなど、これがないと仕事が何も進まないほど大切なものです。