農薬にできること、私にできること

01世界中で使われる
新規化合物を生み出す

農学研究科生命機能学専攻 研究本部/合成研究

N.AN.A

N.A
研究本部 総合研究所 合成2グループ 2019年入社

大学院での研究テーマは「天然物誘導体の合成と生物評価」。天然物の構造をモチーフとして合成した化合物の昆虫細胞や動物細胞への影響を研究し、抗がん剤や殺虫剤に使える可能性を探究していた。大学の講義をきっかけに農薬を身近に感じ、創薬に携わりたいと考えて入社した。選考で学生の話に対し真剣に耳を傾けてくれたのも、この会社に決めた理由の一つ。

私のミッション 何もないところから
農薬の種を創る

現在のメインのテーマは新規除草剤の探索合成です。合成グループの研究員は一人あたり年間200~300化合物を合成しています。安全性の高い農薬が求められているいま、「選択性」といってある特定の雑草だけに効果があり、作物や他の生物や環境に悪影響を及ぼさないものが注目を集めています。しかし、作物も雑草同様に植物であるため、ある特定の雑草だけを選択的に防除することは容易ではありません。活性があり選択性が優れた化合物を見出せても、難しいのはそこから先です。既存剤との差別化・生産面でのコストパフォーマンスなど、様々なハードルが立ちはだかっています。加えて安全性や環境への影響に関する規制も日増しに厳しくなりつつあります。それらを全て乗り越えることは非常に困難であり、途中で探索中止となる研究テーマもあります。そのような中で、自らデザインした化合物が安心・安全な除草剤として上市されることを夢見て、日々粘り強く研究を行っています。優れた除草活性・安全性を併せ持つ化合物を見出すべく、特許や論文、計算化学から得たデータ等を参考に、試行錯誤を重ねながら化合物を合成しています。

何もないところから農薬の種を創る何もないところから農薬の種を創る

携わっている仕事 思い思いに
自分のテーマを掘り下げる

当社では、シード探索として研究員各個人がテーマを持って研究に取り組めるのも大きな特長です。シード探索は非常に自由度が高く、個人の裁量で研究を進められるのが魅力です。私はメインの除草剤とは別に殺虫剤・殺菌剤を狙った化合物を展開しています。そのきっかけとなったのが、当社の強みでもあるオールラウンドスクリーニングという仕組みでした。これは合成研究員が合成した新規化合物を虫、菌、植物のすべてで評価する手法で、これにより目的以外の活性が見出されることもあります。私自身、除草剤向け化合物を合成する際の中間体や副生成物に、殺虫・殺菌活性が認められるという、自分では思いもよらなかった活性を発見したときは、とても驚きました。そして、強い興味を覚えて自分のテーマとして掘り下げています。評価結果が出るたびに生物グループの担当者と議論を重ね、より高活性な化合物を得るため、どのように構造変換していくかを考えます。高性能で有望な化合物が見つかったときは、さらに大きな展開になる可能性もあります。そのような環境の中で、新たな展開のチャンスがあることにも面白みを感じています。

思い思いに自分のテーマを掘り下げる思い思いに自分のテーマを掘り下げる

面白みとやりがい 自分の目で
直接確かめられる面白さ

新規化合物の探索は、実際に合成・評価してみなければわからないことが多い領域です。高活性だと期待して合成した化合物が、実際は全く効果を示さないことは日常茶飯事です。しかし「効果がない」ことも一つのデータとして考察し、次のデザインへと活かします。また、化学構造が少し変わるだけで大きく活性が変化する場合もあり、その過程で従来よりも性能が優れた化合物が見出されたケースもあります。大切なのは、試行錯誤を繰り返す中で見つかる小さなヒントを見逃さないこと。それが活性の発現に結びついたときには、非常にやりがいを感じます。研究所では試験用の温室や圃場にすぐ足を運ぶことができるため、「自分が合成した化合物が効いているな」と自分の目で確かめられます。評価データだけではわからない少しの差を、実際の試験をみて実感できることも面白さに繋がっています。さらに、生物系や安全性のグループとフランクなやりとりをしながら、評価結果について一緒に議論し、研究をすすめることができるのは、研究所に3分野が集約されているおかげだと思います。創薬研究は地道ですが、自分がデザインして作り上げた化合物が農薬として世界中で使われて、社会に貢献するのを想像しただけでワクワクします。

自分の目で直接確かめられる面白さ自分の目で直接確かめられる面白さ

農薬にできること、私にできること

先進技術を駆使した農業に適する
化合物を開発していきたい

今後は世界的にスマート農業が普及し、農業の大規模化や効率化が加速していくと考えられます。合成の担当者として先進技術を活用した農業に適した薬剤などを開発していくことで、食糧の安定供給・飢餓の排除への一助となり、命を救うことに繋がると考えています。私一人にできることは微力かもしれませんが、日々の研究で得られたデータと真摯に向き合い、立ちはだかる壁を着実に乗り越えていきたいです。

ある日のスケジュール
8:30 出社、メールチェック等の事務作業
9:00 実験開始
10:00 テーマ内でのミーティング。各々の進捗状況を報告
12:00 社員食堂でランチ
12:45 実験(午前中に仕込んだ反応の後処理、精製など)
16:30 実験結果の整理、文献調査等を行い翌日の計画を立てる
17:30 退社
私の仕事道具
私の仕事道具
研究のヒミツが満載の実験ノート
日々の実験記録がぎっしりと詳細に書き込まれ、秘密がいっぱい詰まっています。これを無くしたら仕事にならないうえ、外部の人には絶対に見せられません。