農薬にできること、私にできること

03ドローンで散布できる
農薬を製品化する

生命環境科学域応用生命科学類専攻 生産本部/製剤研究

W.TW.T

W.T
生産本部 生産技術研究所 製剤グループ 2018年入社

微生物学や天然物化学等を専攻し、大学院では豆類の根につく菌類が土壌中、集団で交信し合うメカニズムを研究。食に興味があり、食文化の保全や発展に貢献できる企業でものづくりに携わりたいと考えて日本農薬へ。中でも興味があったのが最終製品の設計に携われる製剤グループ。大学の専攻とは畑違いだったが一から知識を付けられると聞き、異分野でも挑戦したいと思い入社を決める。

私のミッション 製剤の最初から
最後まですべて手掛ける

製剤グループの役割は、探索で生み出された新規化合物をベースに、フロアブル剤や粒剤、乳剤などの現場で使える形に製品化することです。その中で私が担当するのは、水稲用殺虫殺菌剤フロアブルなどの処方検討です。まずは現場のニーズに合った使いやすい製品づくりのために、本社の開発グループや営業担当と製剤のコンセプトをすり合わせます。農薬は農業の現場で生産者が使いやすいように、有効成分に加えてさまざまな原材料を組み合わせて作られます。原材料メーカーとの面談で原材料の情報交換を行い、一つひとつ問題をクリアしながら、効果や安全性を中小規模のスケールで検証し、製品化が可能かどうかを評価。とくに安全性に問題ないかが確認できるまで、研究所の担当グループとは何度もすり合わせを行うことにこだわっています。安全性や製剤の品質に問題がないことを確認すると最終的に量産スケールでの製造試験に踏み切ります。最終的な製造に移る段階で、工場でもトラブルなく製造が可能か、現場で目的通りのものができているかどうかを確認します。最終的に工場の量産スケールで製造するまでの一連の流れを、一人の担当者が手掛けて、満足のいく製剤を作り上げることができる点が、当社の特徴です。

製剤の最初から最後まですべて手掛ける製剤の最初から最後まですべて手掛ける

携わっている仕事 ドローンで散布できるように
試行錯誤

現在取り組んでいるのが、ドローンで水田に散布するフロアブル剤の開発です。これまでは人手や無人ヘリコプターでの散布が主流でしたが、ドローンの活用も増えつつあり、問題なく使用できる処方を組み立てる必要があります。ドローンの問題点は、タンクの容量が小さいために通常と同じ濃度では散布の回数が増えて非効率なこと。そこで高濃度でも散布できるような処方を設計する必要がありました。処方設計では、高濃度の希釈でも散布時にドローンを詰まらせないこと、フロアブル剤が使用される夏場の暑い日でも散布液の物性に問題がないこと等、複数の性能が求められました。添加する素材をいろいろと変えた処方を作り、製剤の性能を比較評価していくことで、求められる性能を満たすことができる最適な素材を見つけることができました。発想に行き詰まった時はグループディスカッションで他の研究員にアイデアをもらいながら、フロアブル剤の試作と性能の評価を繰り返しました。ある程度処方が固まった際には、実験室に実際にドローンを持ち込んでの散布性の評価も行いました。現在は実験室レベルで問題がないことを確認し、量産スケールから上市にたどり着けそうな手応えを感じています。

ドローンで散布できるように試行錯誤ドローンで散布できるように試行錯誤

面白みとやりがい さまざまなジャンルの技術に
挑戦できる

初めてテーマが与えられたのが、入社して半年後。自分にできるかどうか、プレッシャーもありましたが、任されて主体的に動いて検討させてもらえることにワクワクしました。製剤の面白さは、生産者が使いやすい形にするために、いろんなアイデアを試しながら製品化できる点です。完成までに仕事の時間はかかりますが、開発のステージが変わってくると検討する内容もがらりと変わって、さまざまなことを経験できるので、常に新鮮な気持ちで仕事に取り組めます。さらに、目に見えるモノを作っている手応えがあります。社内外の多くの人とのコラボレーションにより一つの製品を作り上げていくので、大変な部分も多いですが、自分で設計した製品が形になり世の中に流通することが一番のやりがいです。製品が上市されたときは大きな達成感があります。以前携わった製品が、工場での生産が開始された初回出荷の際、工場のスタッフから製品のダンボールを持った写真が送られてきたときは、とても感動しました。大学には製剤そのものを学べる学科は稀ですが、学科の壁を越えて挑戦してみて良かったと思っています。様々な分野の人が集まって意見を出し合いながら、モノづくりをする楽しみを、これからも味わっていきたいです。

さまざまなジャンルの技術に挑戦できるさまざまなジャンルの技術に挑戦できる

農薬にできること、私にできること

少子高齢化による農業従事者減少を
カバーできる農薬の開発に取り組み続ける

現在の日本は少子高齢化が進み、農業従業者の減少や高齢化が大きな問題となっています。そういった中で、ドローンによる農薬散布などは人手不足の解消や作業の省力化のための、優れた解決策の一つです。そのドローン向けの製剤設計をはじめとした省力化に貢献できる農薬の開発ができるのは、研究者にとって非常にやりがいがあります。これからも散布量や散布回数を減らして、生産者の皆さんの手間を省けるような製品を開発していきたいと考えています。

ある日のスケジュール
8:30 出社 メールチェック
9:00 調製した農薬サンプルの評価(製剤物性や有効成分の安定性評価など)
12:00 社員食堂でボリューミーな日替わり定食
13:00 資材メーカーと面談
14:00 次回評価するための農薬サンプル作り、物性確認
16:30 今後の試験計画の作成
17:30 退社
私の仕事道具
2冊のノートとストップウォッチ
2冊のノートとストップウォッチ
仕事のメモをとるノートは実験用と、外部の方との打ち合わせ用の2冊を用意しています。ストップウォッチは剤の製造条件の検討、使用感や散布性能の評価に欠かせません。