農薬にできること、私にできること

06バイオスティミュラントで
環境に優しい製品を開発

理学系研究科生物科学専攻 研究本部/生物研究

I.AI.A

I.A
研究本部 総合研究所 植物グループ 2019年入社

植物生理学の専攻で「植物ホルモン・オーキシンと植物の重力応答の関係性」をテーマに、国際宇宙ステーションISS上で、オーキシンがどのように振る舞うかを研究していました。研究で得た植物生理学の知見を活かし、新規作用性を持つ除草剤を見つけたいと思ったのが日本農薬への入社動機で、実家が農業に携わり身近だったことも、農薬業界に飛び込んだ理由の一つです。

私のミッション 製品化につながる評価や
試験を担当する

植物グループでは、新規化合物の探索を行う一方、新たな混合剤の開発や既存剤の適用拡大、普及拡販のための性能評価を行っています。また、新たにバイオスティミュラント資材の性能評価にも取り組んでいます。その中で私のミッションの一つは、水稲用除草剤の開発・普及に向けた性能評価です。水稲除草剤は生産者が使いやすいように、複数の除草剤成分を合わせた「混合剤」で販売されるものが多いです。私は新しい混合剤案に対して性能評価を行い、製品化の可能性を社内の関連部門や原体供給メーカーと共に検討しています。製品化につなげるために温室内の評価とともに社内圃場試験や現地圃場試験を実施しています。また、様々な効果変動要因試験や、剤の特性評価も行っています。もう一つのミッションとして、会社が新たに取り組んでいる「バイオスティミュラント資材」という領域で、ラボレベルの評価を行っています。バイオスティミュラントは、気候や土壌環境など非生物的ストレスを防ぐことで、植物が本来もつ力を引き出して収量の減少を防ぐための新たな農業資材です。化学農薬とは異なり、天然由来の成分を中心につくられており、環境保全に配慮した製品として当社でもこれから力を入れていく新しい分野です。

製品化につながる評価や試験を担当する製品化につながる評価や試験を担当する

携わっている仕事 バイオスティミュラントの
製品化に関わる

バイオスティミュラントの担当として製品化に成功したのが、「フロストバスター」という資材です。これは果樹の花に霜が降りて凍霜害を受けることで、収量が減少してしまうことを防ぐための資材です。原材料となっているコーヒー粕から抽出されたポリフェノールには、水の凝固点を下げる効果があり、たとえば道路の融雪剤などにも応用が可能です。大学の研究から生まれたこの原材料を農業分野、特に果樹の霜害防止を目的として大学と飲料メーカーとの合同で開発することとなり、製品化にあたっての性能評価を担当しました。しかし、寒い時期だけ試験を行っていたのでは時間がかかり、しかも霜が降りない年には評価ができません。そこで性能評価のために恒温槽を用いた小スケールで年間を通じて評価できる試験系を新しく構築しました。特に植物に凍霜害が起きる温度条件を見つけ出すことにはとても苦労しました。幸いにも期待通りの結果が得られて、無事に製品化に結びつけることができました。少しでも早く世に出して多くの人に使われることがとても重要であり、短期間で発売に漕ぎつけられたのは、自分にとっても大きな達成感がありました。

バイオスティミュラントの製品化に関わるバイオスティミュラントの製品化に関わる

面白みとやりがい 社内外の人と協働した
新たな価値の創造

これまで手がけたことのない領域の製品に挑戦できたことに対して、大きなやりがいを感じました。除草剤の開発やバイオスティミュラントの評価においては、社内だけでなく社外の方とも関わることが珍しくありません。多くの人が一丸となって一つの製品を作り出すのはとても刺激的です。またバイオスティミュラントの評価では、一から試験系を作り出す必要があり、多くの時間と労力を要しますが、それ自体も面白さにつながっています。フロストバスターは将来的に海外への展開も検討中です。他にも海外案件は多く、できるだけ現地の環境に合わせた評価をできるように検討しています。たとえばヨーロッパとインドでは気候や植生、ストレスも異なるため、どのようなことを目的に評価するべきかを検討しながら実験を行っています。さらにどういった分野で使用できるのか、どのような使い方をすればより高い効果を得られるのか、様々な条件での評価を行い、効果の差を見極めて、生産者に満足してもらえる使い方を提案していくことが重要です。今後、農薬で解決できない領域でバイオスティミュラントが活躍することが想定されるなか、その一端を支えていきたいと思っています。

社内外の人と協働した新たな価値の創造社内外の人と協働した新たな価値の創造

農薬にできること、私にできること

新規の農薬やバイオスティミュラントの
開発にこれまで培った知見を活かす

食糧の増産と安定的供給には農薬やバイオスティミュラントが必須と考えています。雑草や病害虫の抵抗性の発達を考慮すると、これからも新しい農薬を開発し続けることはとても重要です。そのような中でこれまでにない新規の除草剤を見つけ出したり、新たなバイオスティミュラント資材を開発したりするために、自分の知見をどんどん生かしていきたいと思っています。

ある日のスケジュール
8:30 出社 メールチェック
9:00 試験中の除草剤の性能評価、次の試験用植物の調製
12:00 社員食堂で日替わりランチ
13:00 会議や打ち合わせ等
15:00 データ入力、資料作成
17:30 退社
春から夏は圃場に出ていることも多く、時期や日によって変わることが多いです。
私の仕事道具
植物の生育確認用の定規
植物の生育確認用の定規
一見アナログですが、植物の生育確認に必須のアイテムがこの定規。昔懐かしい竹の定規を中心に室内用や圃場用など数種類を使い分け。長年使ってとても年季が入ってきました。