農薬にできること、私にできること

04分子生物学的な手法で
新規殺虫剤の作用機序解明に挑戦

生命機能科学科生物資源科学専攻 研究本部/生物研究

O.YO.Y

O.Y
研究本部 総合研究所 昆虫グループ 2019年入社

学生時代には難防害虫であるハスモンヨトウについて、虫の味覚というユニークな観点から分子生物学的なアプローチを用いて研究していた。その知見を活かして農業や食料生産の分野で仕事がしたいと思い、出会ったのが日本農薬。研究所の見学時に感じた職場の雰囲気がフランクかつアットホームで、長く研究が続けられそうだと感じたことが入社の決め手に。

私のミッション 作用機序解明により、
農薬のポテンシャルを最大限に引き出す

昆虫グループにおいて私は主に開発を担当し、多くの研究内容がある中でも農薬の作用機序解明に取り組んでいます。同じ作用の薬剤を使い続けることにより、病害虫は農薬に対する抵抗性を獲得するため、農業の現場では異なる作用を持つ剤をローテーションで使用しています。したがって、新しい剤がこれまでにないメカニズムで作用することを明らかにできれば、その剤を組み込んだ新たな防除体系を立案することができます。そのため、農薬開発企業にとって作用機構解明は重要な研究課題の1つとなっています。私が現在チャレンジしているのが、上市したばかりの水稲向け新規水稲用殺虫剤「オーケストラ」の作用機序の解明です。「オーケストラ」は、ウンカ類の脱皮ホルモンの濃度をかく乱し、脱皮を阻害して防除する画期的な剤です。その作用機構を解明し新規性を立証することが私のミッションです。それによって新たな防除体系を提案できるだけでなく、作用機構面からも既存のウンカ類防除剤との差別化を図ることが可能となります。

作用機序解明により、農薬のポテンシャルを最大限に引き出す作用機序解明により、農薬のポテンシャルを最大限に引き出す

携わっている仕事 分子生物学的手法を用いた
農薬の作用機序解明

大学では分子生物学的なアプローチから研究を行っていました。その技術を見込まれ、入社直後から「オーケストラ」の作用機序解明の研究を任されることになりました。しかしながら、一口に農薬と言っても、効果を発揮するメカニズムはさまざまであるため、農薬の特徴に合わせて必要となる試験は異なります。対象とする昆虫に農薬を処理したときの症状からおおよその作用点を推定し、試験方法を構築していく作業はなかなか難しく、試行錯誤が必要です。「オーケストラ」の場合、処理した昆虫の脱皮が上手くいかない点が特徴的でした。既存のウンカ類防除剤との差別化を意識し、まずは昆虫の脱皮メカニズムに関して、研究機関や大学などから情報や知見を得ることからスタート。その後、分子生物学的手法を用いて作用点候補を探索し、より詳細な作用機序解明のため試行錯誤を重ねています。未知のターゲットを攻略するために、常にグループのメンバーとディスカッションを行い、新規技術やさまざまなアプローチの方法も視野に入れながら、作用機序の解明に挑戦しています。

分子生物学的手法を用いた農薬の作用機序解明分子生物学的手法を用いた農薬の作用機序解明

面白みとやりがい 選択的で
安全な農薬をつくる

作用機構の新規性を十分に証明することは、農薬のポテンシャルを引き出すための大切な業務です。農薬の特徴に合わせて試験方法を試行錯誤する作業は根気との勝負になりますが、そこにこの仕事の面白さがあると言えます。また、新規の作用性が証明されれば、これまで世の中に存在していなかった剤の特性を、世界で初めて自分が確認するという体験ができるため、その点もやりがいがある部分です。「オーケストラ」の画期的な点は、ウンカ類に選択的に効果があるという点です。農薬が選択的に効果を示すということは、ターゲットとなる害虫以外に悪影響を及ぼさないメリットがあり、環境への安全性という観点からも非常に大きなアピールポイントにつながります。このような剤の特性から強みを発見することが私の目標であり、面白みの一つです。仕事で大事にしているのは、自由な発想でチャレンジすること。研究にはさまざまなアプローチがあるので、視野を広く持って既存のアイデアにとらわれない発想を大事にしています。新しい挑戦に対して伸び伸びと実験させてもらえる環境の中で、農薬開発のスペシャリストになることが、研究者としての大きな夢です。

選択的で安全な農薬をつくる選択的で安全な農薬をつくる

農薬にできること、私にできること

安全性の高い選択的な剤の研究開発で
世界の食糧問題を支える

EUをはじめ、海外では環境保全のために化学農薬の規制が強まる傾向があります。そうした中で、化合物の安全性を研究開発の早い段階から見据え、より選択的で安全な農薬の研究開発を行うことで、多くの国や地域の農業を支える新たな剤の創出を目指しています。今後の食糧問題を支えられる人財となれるよう、知識と技術力の向上に努めたいと思います。

ある日のスケジュール
8:30 出社・メールチェックなどの事務作業
9:00 生物試験の準備
10:00 薬剤処理
12:00 コミュニケーションルームでお弁当、その後は研究員仲間とサッカー
14:00 試験の調査
16:00 試験データの集積、解析
17:00 退社
私の仕事道具
こだわりのピペット
こだわりのピペット
薬剤の希釈から処理まで、様々な実験で使用するのがピペット。手に馴染むものを大切に使用しています。