農薬にできること、私にできること

05製品の効果を裏付ける
分析手法を構築する

生命環境科学研究科応用生命科学専攻 研究本部/生物研究

S.MS.M

S.M
研究本部 総合研究所 病理グループ 2020年入社

大学での研究は、青枯病菌に効果がある化合物の探索。自分で一から化合物の合成を行って活性の有無を検証できるのが面白かった。社会を基盤から支えるような仕事に興味を持ち就職活動を続ける中、同じ研究所内に合成、生物評価、安全性などの部署が集まり、連携しながら研究開発を行っている点に魅力を感じ、研究員たちが仕事に誇りを持っているのにも好感を抱いたのが入社の理由。

私のミッション 新規化合物の評価から
微生物農薬まで

探索からその後の開発に至るまでの幅広い領域において、新規化合物を評価し、活性の有無や作用機序を調べるのが私のミッションです。毎週数百種類という、学生時代とは比較にならない数の化合物を扱うため、求められるのは効率よく評価すること。植物に化合物の接種や散布を行い、どのような構造の化合物がどの病原菌に効くかを評価する構造活性相関をまとめていきます。そして効果が認められた化合物に関しては、構造の一部を変えてさらに活性を高められないかという構造展開について、合成担当者とディスカッションしながら検討していきます。広い知識や経験が必要なため、先輩社員のサポートを受けながら進めることも多いです。この他にも、さまざまな業務を任されています。海外市場向けの製品開発では、海外の菌株を用いた評価系の構築を担当。また国内向け製品の開発に関する業務では、自社製品「パレード」がもつ、ネギの黒腐菌核病菌に対する優れた防除効果の発現様式を解明するために、薬物動態を解析しました。さらに、新しい農薬への取り組みとして、より環境にやさしい農薬である、微生物が主成分の微生物農薬に関する評価系の構築にも挑戦しています。

新規化合物の評価から微生物農薬まで新規化合物の評価から微生物農薬まで

携わっている仕事 植物中の薬物動態を
質量分析で解明

「パレード」の薬物動態の解析では、LC-MSを使った質量分析を行い、ネギの中の薬物濃度と菌が感染するタイミングとの相関を調べることで、製品の効果を裏付けるという研究を行います。上司のサポートも受けながら試験を立ち上げて分析をしました。この研究の難しさは、単に機械的にデータ分析をするだけでは終わらない点。途中、分析値が予測とずれたケースでは、その原因について病理グループのメンバーと考察を重ねる必要がありました。あきらめずに取り組んだ結果、パレードの効能を裏付ける優れたデータが取得できたのです。研究を通じて目的とした成果が得られたことから、この手法をグループ内の他の案件でも使えないかという打診もあり、新しい業務にも発展できそうな手応えを感じています。この分析業務は、学生時代にNMRなどの分析機器を扱っていた経験が評価され、入社直後から任されるようになりました。分析の仕事ははっきりと結果が出て、客観的に評価できる点に面白さがあります。このように自分の好きな分野や得意な分野を活かせたり、新しいことを学べたりする環境があるのが研究所の良いところ。グループの他のメンバーも病理の研究に加えて、それぞれが得意分野をもって集まり、思う存分に能力を発揮しています。

植物中の薬物動態を質量分析で解明植物中の薬物動態を質量分析で解明

面白みとやりがい 日々の業務で達成感が
積み上げられる

毎日の仕事も変化に富んでいます。実験室レベルの研究から、温室や圃場に出て自分たちで栽培した作物へ実際に剤を散布して評価するところまで、幅広い業務が手がけられます。学生時代には圃場に出た経験がなかったので、圃場のプロである先輩社員たちに教えてもらいながら一つひとつ業務を習得中です。そして、それぞれの実験で日々何らかの結果が出て、成功体験を積み上げられることに面白さを感じています。一方、探索の領域については、有機合成のプロたちが作った化合物を評価して、構造展開の提案をした結果、実際に活性が向上したり幅が広がったりするのを自分で確認できる点に大きな魅力があります。入社前には、数多くの化合物の中から農薬が生まれるのはとても低い確率だと聞いて、心が折れるのではないかという不安もありましたが、入ってみると全くそんなことはありませんでした。現在挑戦中の微生物農薬の評価系構築についても、結果を出して会社の新しい事業の一角に結びつけていきたいと考えています。成功体験を積み上げて生まれた製品が国内外の食糧安定供給に貢献できるように、粘り強く化合物を評価しつづけ、未来の農薬を見つけるのが目標です。

日々の業務で達成感が積み上げられる日々の業務で達成感が積み上げられる

農薬にできること、私にできること

圃場で実際に農作業も行う経験を活かし
労力を軽減する製品に結びつける

私たちの仕事は研究室にこもるのではなく、実際に圃場に出て作業することで、農作業そのものを体感することもできます。その経験を活かして作業を軽減できるように、少ない散布で効果が持続するような剤や、苗の状態で使用すればその後の散布が不要になる剤など、省力化に貢献できるような製品に結びつけていければと思っています。そして、効率よく収量を上げられるようにして、世界中の食糧安定供給に貢献していきたいです。

ある日のスケジュール
8:00 出社
8:30 化合物を希釈し、植物に散布する
12:00 ランチタイムは自分のデスクでお弁当
13:00 試験結果のまとめ、次回試験計画の作成
15:00 午前中に散布した植物に病原菌を接種する
16:00 上司、先輩とのディスカッション
17:00 退社
私の仕事道具
サングラスと帽子
サングラスと帽子
温室や圃場での畑仕事をする際の、日差し対策や熱中症予防に欠かせません。特にブランド物ということはなく一般的に売られているものを作業時に着用しています。