研究開発戦略
2030年のありたい姿
- 先進創薬技術の整備と革新に常に取組み、新農薬創出基盤としての「発明」、「発見」、「保証」の3分野とこれらを「推進」する機能を一か所に集約した「四位一体」体制により、環境調和型を志向した創薬研究を進めている。
- AIやデータ活用で創薬効率を向上させグローバルに展開している。
- これらにより、3年に1剤のペースで新規化学農薬を開発している。
- 農薬の研究開発で培った当社の強みを活かし、医薬・動物薬・生物農薬など、他のライフサイエンス分野や新規分野でも価値を創出している。
実現に向けた課題と対応
- 新規骨格の発見難度向上および国際的な登録要件の厳格化への対応。
- AIを活用した多様な合成アイデアの立案や安全性予測。
- オープンイノベーションによる外部知見の活用。
- 各国で顕在化している薬剤耐性害虫・病原菌・雑草への対応。
- 早期かつ正確な情報把握と新たな評価系導入による迅速な実用性判断。
| 2024年度の実績 | 2025年度の計画 |
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基本方針
基本方針として「安全第一と法令遵守の更なる追求、サステナブルな社会に貢献するシーズの発掘と育成・成果創出」を掲げ、以下の項目に取り組みます。
- 単体売上の約10%(連結では約7%)を年間ベースで投入し、3年間で累計200億円の投資を計画しており、「四位一体体制」を活かしサステナブルな社会に貢献する新規作用性原体の創出を目指します。
- 動物薬分野を中心に、株式会社ADEKAとの連携によるシナジーの創出を図ります。
- 法令違反には至らないまでも、内部監査により自主基準に抵触する化学物質管理が判明した事例が発生したことから、安全文化の深化、法令順守意識の向上、ならびに法令改正への対応を目的とした社員教育を強化します。
充実した研究開発体制と優れた新剤開発力
当社では、新しい農薬の創製においては、「化学(有機合成、プロセス化学、製剤研究)」、「生物(生物評価、作用機構研究)」、「安全性(人畜安全性、環境安全性研究)」の3領域が密接に連携することが不可欠と考えています。これらの機能を総合研究所に集約するとともに、「研究推進(知的財産、研究企画、研究業務)」を統合した「四位一体体制」を構築することで、研究員同士の日常的な情報交換と効率的な研究を推進・実践しています。
また、1つの化合物に対して、殺虫・殺菌・除草作用・医薬など、幅広い分野を対象に評価を行う「オールラウンドスクリーニング体制」も当社の強みです。目的外の活性であっても見逃すことなく幅広く可能性を追求しています。
代表的な成果として殺虫剤「フルベンジアミド(商品名:フェニックス)」があります。除草剤として探索中の化合物に、チョウ目害虫に対するごくわずかな筋収縮作用を見出した研究員の粘り強い取組みにより、昆虫のリアノジンレセプターを選択的に活性化する殺虫剤として開発に成功しました。
また、水虫薬「ラノコナゾール」および「ルリコナゾール」は殺菌剤の探索研究中に発見された化合物で、光に弱く農薬としての適用は断念しましたが、極めて高い抗菌活性に拘り、室内の使用で優れた薬効を示す水虫薬として開発し業界内で高い評価を得ています。
近年では、水稲ウンカ防除剤「ベンズピリモキサン」および汎用性殺虫剤「シベンゾキサスルフィル」など、独自の評価系を活かした新規作用機構の製品開発に繋げています。
創薬研究の柱:「オープンイノベーションの強化」、「データ駆動型創薬体制の構築」および「グローバル同時開発・登録の推進」
オープンイノベーションの強化創薬の難度がますます高まる現在、外部リソースを活用したオープンイノベーションの推進は不可欠となっています。当社では、他社や公的機関との共同研究を通じて、新規化合物骨格の探索を積極的に進めています。
データ駆動型創薬体制の構築
研究者のアイデアに独自のAIを活用した計算科学を組み合わせることで、標的生物に対する活性を効率的に向上させています。さらに、既存の安全性データベースに基づく経験知とAIによる毒性予測を活用し、人畜および環境に対する高い安全性の確保を目指した創薬研究を推進しています。
グローバル同時開発・登録の推進
グループ会社の参画により、新規剤開発における化学・生物・安全性関連の各タスクの進捗をグローバルに管理・可視化するシステムを運用。早い段階から新規剤の国際的な評価を進めています。
グローバルネットワークによる製品開発・販売力
新規水稲用ウンカ類防除剤「ベンズピリモキサン(商品名:オーケストラ)」は日本とインドでほぼ同時に登録取得し販売開始に至りました。これにより、アジア・モンスーン地帯に広がる水稲栽培地域のニーズに応える製品開発が加速しています。また、新規汎用性殺虫剤「シベンゾキサスルフィル」については、一般社団法人 日本植物防疫協会が実施する新農薬実用化試験に供試し、農薬登録申請に向けて必要な有効試験事例を積み重ね2025年11月に国内登録の申請をしました。今後は、韓国やインドを皮切りに、各国での適用を目指します。
このような強固な創薬基盤とグローバルネットワークの融合は、創薬難度が高まる中にあっても、安定的に新規原体を生み出し続ける原動力となっています。
原体開発によりビジネスチャンス拡大
原体の開発には、安全性試験や工業化検討などを含めて10年以上の長い期間と巨額の投資が必要です。しかし、特許を取得し、特長ある製品として開発することで、自社独自のビジネス展開が可能となり、大きな利益を生み出すことができます。
さらに、開発を通じて「発明」「発見」「保証」「推進」といった各分野において幅広い知識とノウハウが蓄積され、次の原体開発への好循環が生まれます。さらに、主要な農業国で販売体制を整備することで、成長を続ける世界市場において新たなチャンスを獲得しています。
安全性の高い環境調和型製品の開発強化
農薬製品は各国・地域の登録制度で厳格に管理され、安全性が担保されています。一方で登録要件に関する世界的な厳格化の動きを受け、当社はこれまで以上に環境に配慮した製品の開発・拡販に取り組む方針を打ち出しました。すでに開発済の品目についても、人畜安全性(哺乳類に対する毒性など)や環境安全性(魚類や天敵への影響、土壌半減期など)の複数の項目を満たす「環境調和型製品」を定義し、普及拡販を図っています。2024年度現在、環境調和型製品の売上高は347億円に達し、2026年度には396億円を目指す計画です。
また、近年の欧米や国内における食料・農業関連の政策において、化学農薬削減の流れを受け、当社ではバイオスティミュラント分野や生物農薬分野における資材開発を強化しています。日本では微生物資材「クロスバリュー」の販売を開始しており、各方面から高い評価を得ています。今後もバイスティミュラントに加え、微生物農薬等の開発を進め製品ポートフォリオのさらなる充実を図り、作物保護資材分野の一つの柱として育てていきたいと考えています。










