トップコミットメント
安全で安定的な食と豊かなくらしを守り、サステナブルな社会の実現に貢献します。
サステナビリティ経営を推進

NICHINO グループは、1928年に日本初の農薬専業メーカーとして創業以来、農作物を病害虫や雑草の被害から守るための農薬の研究開発と製造、販売、普及をビジネスモデルとして発展してきました。戦後の高度経済成長、バブル崩壊後の失われた30年など、国内の経済環境や人口動態が大きく変化する中、日本のみならず世界において農作物の収量確保と品質向上を通じて食料の安定供給に貢献しています。
研究開発型企業として培ってきた「独自技術」と様々なイノベーションを創出してきた「企業家精神」は、創業以来の私たちの強みと言えます。また特にこの20年間は、「グローバル化と現地化」という独自の方針に基づいてグローバル展開を強化し、それぞれの地域に根ざした形で現場の振興を図ってきました。このように自社の強みに拘った事業展開により、農薬関連業界でも特異なポジションを築いています。
この先、NICHINO グループが継続して事業活動を行っていくためには、こうした特徴的な強みを活かしながら新たな時代の要請に的確に対応していくことが求められています。それだけ私たちを取り巻く社会情勢は急速かつ複雑に変化しているからです。
この数年を振り返ってみても、世界は大きく変化してきました。2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症が漸く落ち着いて、5類感染症に移行してから1年が経ちました。国内では日常生活を取り戻しつつありますが、私たちのくらしや働き方、ビジネス環境はコロナ前とは大きく変わりました。さらにロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫などの地政学的リスクも高まっており、将来予測が不透明な状況が続いています。
また当社グループの事業特性から考えれば、エルニーニョ現象などの地球的レベルの気候変動は特に見過ごせません。これまでにない干ばつや豪雨などの天候不順により農業生産にも様々な影響を及ぼしています。
企業経営においても、ESG経営や人的資本経営など非財務価値に関する積極的な取り組みと情報開示が求められるようになり、政府が主導するグローバル競争において堅実に戦える企業への体質転換が強く要請されるようになりました。持続可能な社会の実現に貢献することは、今や企業の当然の責務となっています。
このような変化を見据え、私たちは多種多様でグローバルな社会的課題の解決に、より一層取り組む必要があると強く感じています。そのため、経済価値と社会価値を両輪とするCSR経営をさらに発展させたサステナビリティ経営を推進してまいります。
そのための第一歩として、NICHINO グループの存在意義を改めて見直し、基本理念と行動憲章の一部を改訂することとしました。基本理念については、「安全で安定的な食と豊かなくらしを守り、サステナブルな社会の実現に貢献します」、「新たな価値の創造にチャレンジし、社会のニーズに応えます」、「公正で活力ある企業活動により全てのステークホルダーの期待に応えます」 の3つとしました。これまでの理念を大切にしながらも、環境・社会・経済の長期的で持続可能な状態を目指しながらNICHINO グループの持続的な成長を実現する決意を込めてアップデートしたものです。これに合わせて行動憲章も一部改訂し、グループ会社全員に浸透させていく方針です。
7つの優先課題への取り組みを継続
サステナビリティ経営の具体的な実践にあたっては、NICHINO グループのビジネスへの重要性を踏まえて7つの優先課題(マテリアリティ)を選定し、取り組みを進めています。2023年度の進捗は次の通りです。
E:環境経営の高度化 (環境保全)
日々のエネルギー使用量削減に加え、ニチノーサービス福島事業所で太陽光発電の稼働を開始しました。またトラック輸送能力の低下が懸念される物流2024年問題への対応を含めて、モーダルシフト率の向上を図っています。製剤処方についても、有機溶媒の削減をはじめ環境負荷の少ない処方への切り替えを進めています。
なおCDP(Carbon Disclosure Project)の気候変動分野に関する評価において、今回初めて回答した結果、「B」評価に認定されました。今後もさらなる改善に努めてまいります。
S:人権経営の拡充 (DE&I、人財開発)
従来の人権基本方針を拡充させる形で新たな人権方針を策定しました。また1次サプライヤーを対象として、国連グローバルコンパクトのアセスメントツールを活用した調達アンケートを実施しました。現時点で大きな問題は見当たりませんでしたが、引き続きアンケート結果を踏まえたフィードバックと改善に取り組むとともに人権デューディリジェンスを進めてまいります。
そのほかにも多様な人財の活躍推進の一環としてグローバル人事交流を実施しております。なお2024年3月末の女性管理職比率は10.3%に上昇しました。
S:安全文化の深化 (労働安全衛生、製品安全)
当社グループの事業活動において「安全」は何よりも重要と考えています。当年度はニチノーインディアでのベンズピリモキサン原体専用設備が稼働しました。引き続きガバナンス機能を強化し、国内外のグループ全体で災害ゼロ達成を目指します。
S:社会のニーズに対応した技術と製品開発 (顧客満足の追求)
環境への負荷がより少ない 「環境調和型製品」 の比率を増やしていく予定です。社内独自の厳しい基準を設けることで、より高い性能と安全性を追求することによりグローバルでの登録を加速していきます。その一環としてバイオスティミュラントであるクロスバリューの国内販売を開始しました。
またスマート農業への対応としてドローンで散布できるよう既存剤の登録を追加取得するほか、スマートフォン用アプリ「レイミーのAI病害虫雑草診断アプリ」の海外展開を進めています。今後も医薬・動物薬を含めた有望化合物の創出、新規生物農薬/作物保護資材の導入・販売を目指します。
S:コミュニティへの参画 (ステークホルダーとの対話)
ブランド戦略の一環としてグループロゴを統一しグローバル展開を図りました。総合研究所では大阪府アドプトフォレスト制度に参画して森づくりの活動に取り組んでいます。またESG(環境、社会、ガバナンス)の対応に優れた日本企業のパフォーマンスを反映する FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄に採用されています。今後も農薬の必要性・安全性の啓発に努めます。
G:企業・組織統治の強化 (コーポレートガバナンス)
全般統制チェックシートの見直しや海外グループ会社の範囲を拡大しました。引き続きRC活動の海外展開、内部監査の強化・拡充を図り、サステナビリティ経営のグループ内での定着に努めます。
全般:コンプライアンス、リスクマネジメントの拡充 (BCP)
農薬の輸出入に関わる外為法対応を強化するために貿易管理委員会を設立し、運用を開始しました。また有機フッ素化合物を含む各国の規制動向の情報収集やNICHINO グループの事業が貢献しているSDGs項目の選定を行いました。大規模災害対応など、BCPの課題整理についても継続していきます。
ありたい姿を目指して
2023年度までの3年間に渡って取り組んできた中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」は、新型コロナウイルス感染症拡大などの影響を受けながらも、「収益性向上」、「技術革新・次世代事業の確立」、「持続的な企業価値向上」という3つの基本方針の下、目標であった売上高1,000億円以上、営業利益率7%以上を達成することができました。
2024年度からは新中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」が始まります。これは中長期での持続的成長を目指すサステナビリティ経営をさらに進化させていく3年間と位置付けています。「GGS」では6つの基本方針を掲げており、「事業と収益の拡大」、「新たな収益源の創出」、「財務基盤の強化」という経済価値の向上と、「環境経営の高度化」、「人権経営の推進」、「企業・組織統治の強化」という社会価値の向上を目指していきます。
その中でも新たな取り組みとして、環境調和型製品の開発と化学農薬以外の事業ポートフォリオ拡大など事業戦略の深化を図ることにより、これまでのカーボンニュートラル実現に向けた温室効果ガス(GHG)排出量の削減などとともに環境経営の高度化を目指してまいります。またNICHINO グループの強みの源泉たる人財の力を最大限に引き出すべく人的資本経営の推進を加速します。
将来的に私たちが目指す姿は、「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」というビジョンの実現にほかなりません。具体的には、世界の農薬市場でトップ10以内となる3,000億円以上の事業規模を有し、世界のライフサイエンス市場においてカーボンニュートラルの実現、環境調和型の製品・サービス・技術の継続的な創出、これらを通じてサステナブルな社会の実現に大きく貢献する、独自性のある企業を目指してまいります。
そのためのマイルストーンとして、2030年には、事業規模として1,500億円超、営業利益率10%以上、ROE10%以上の財務価値を創出するとともに、環境保全や人的資本の開発などの非財務価値の創出についても目標を設定しております。
日本農薬は創業以来、農薬製品を通じて病害虫雑草防除による食料安定生産に貢献してまいりました。この事業活動そのものが社会のサステナビリティに直結するものであり、私たちの存在意義であると誇りを持っています。この事業が続く限り今後もそれは変わるものではありません。農薬をはじめ医薬・動物薬など幅広い分野で社会ニーズに応える先進技術を提供し、安定的な食を確保し、豊かなくらし・環境を守るべく挑戦するとともに、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

